相生座のあゆみHISTORY Ⅱ

相生座こけら落とし公演より ろうそく芝居

二 ろうそく芝居 | 江戸時代の歌舞伎を忠実に再現

相生座ができてから「ろうそく芝居」を再現したことがあります。昭和51年でしたか、これは歴史に残るものです。たぶん江戸時代以降の本当のろうそく芝居はこれが最初の最後じゃないかと思いますね。

分らないことだらけの挑戦

明かりはすべて和ろうそくで、江戸時代の歌舞伎の姿を再現したのです。消防法の関係上、後で小栗さんが消防署の方へ謝りに行かれたと伺いましたが―。 さてこのろうそく芝居、いざやろうということになったものの、分らないことだらけ。ろうそくにしても、亀山まで芝居用の和ろうそくを特注したりもしました。小栗さんが昔の資料を調べられたのでしょうね。 衣裳に金糸銀糸がふんだんに使ってある理由も、役者の顔を赤く塗るのも、その折りによーく解ったのです。ろうそくの光で映えるのです。また本水を使用するとさらに映えました。

和ろうそくに見事に映える衣裳、役者の顔

「いざり」と呼ばれる、ろうそくを五本連ねて灯す道具があります。文献によると上演中に何度も盛んに出したとか、ろうそくの芯を切ったとかある。 舞台稽古が五時間ほどかかったのですが、その間に実験をしてみると一本で充分燃え続ける。三時間の公演の間は充分に持つはずなのです。しかし、当日小屋いっぱいにお客さんが入ってくると、燃えるのが早いのですよ、特に客席の中央になるほど。 お客さんの吐く二酸化炭素の影響でしょうね。 やってみてわかったのです、文献にあったことが。バック・トゥ・ザ・フーチャーなのですね、まるで江戸時代へ戻ったようなのですよ。幻想の世界であったと同時に本当に貴重な体験をさせていただきました。

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